父の日

父の日ってなにを贈ったらいいのか毎年悩む。たいていゴルフ用品を選んできたけど、今年は部屋着にしてみた。わりと明るめの。義父はお酒が好きなので、セットになったものを送った。
実家の父の部屋からベランダにつながっているのだけど、一面緑に覆われていてびっくりした。ゴーヤのカーテンにトマト、きゅうり、金柑にミニバラ、ひまわり・・・。ベランダ菜園を始めたとは聞いていたけれど、まさかあんな光景がひろがっていたとは。もはや洗濯物を干すのも一苦労なのでは。父は朝起きたらまずそれらの様子を見にいくらしい。これで畑も始めたんだから、よっぽどハマっているんだろう。定年を迎えてありあまる時間をどうするんだろうと気になっていたのだけど、これだけ夢中になれることがあってちょっと安心。
ひとしきりその菜園に驚いてから、プレゼントを渡した。なんというか・・・父はとてもストレートに喜びを表現してくれた。「ありがとう」「ちょっと着てみよう」「よし、これからこれを着よう」。。。すごく嬉しかった。毎年の決まりきった行事みたいになってるけど、やっぱり渡してよかった。聞くと、東京にいる弟からも何年かぶりにメロンが(!)届けられたらしい。さっそく写メールにして本人に送ったとのこと。よかったねえ。
父は教師をしていて、厳しく叱られたりすることはほとんどなかったけれど、威厳のようなものは昔からあった。家族のなかでは「お父さんが絶対」だった。私はそういうものに反抗することもなく、ただ絶対的に頼れる存在が一家の中心にいてくれることに安心していたと思う。
でも結婚して、すこし離れて。対等に話せるようになった(気がしている)と同時に、父が確かに年老い初めていることを実感するようになった。いつまでもそこにいてくれる存在ではない、ということも。背中が小さくなっていく父を見て、まだまだ子どもでいたいと思う私の気持ちはちくっと音をたてる。いつか、逆転する日が来るのだ。
親孝行できているかはわからない。情けないけれどほんとうに頼ってばかりだと思う。眠るまえ、緑の覆い茂るベランダを、うれしいうれしいという父の声を、その声のひびく背中を思い出して、少しだけ泣いた。